症例: ロップイヤー メス  3歳6カ月齢 BW3.2kg   ウサコ

 

少し前から、肛門と生殖器周囲が汚れ、

炎症が起こっているという主訴で、初診のロップイヤー、ウサコちゃんが

来院しました。

このような場合、慢性の下痢や尿漏れが疑われ、

盲腸機能低下や膀胱炎等の泌尿器疾患が考えられます。

そこで、レントゲン撮影を行いました。

ふくうさ1.jpg

 

レントゲン所見で、

膀胱内に球形の膀胱結石が確認されました。

消化管内には目立ったガス像はなく、

この排泄口の炎症は、膀胱結石による排尿異常が

原因であると判りました。

 ウサギのメスの尿道はかなり拡張性があり

時にこの大きさでも尿道に流れることがあり

尿道に栓塞すると排尿障害がおこり、厄介です。

確実に治療するなら、外科的摘出です。

上記について、飼主のFさんにお話をして

1週間後、膀胱結石摘出手術、及び子宮卵巣摘出を実施することとしました。

 

ふくうさ2.jpg

 

 

鎮静目的の前処置後、

イソフルレンBOX麻酔で導入をしています。

 

 

 

ふくうさ3.jpg

 

麻酔状態に入り、

手術部位である腹部の毛刈りと剃毛をしました。

モニター用コードが付けられました。

 

ふくうさ4.jpg

 

手術部位の皮膚を切開し、

腹壁は露出されました。

腹壁の中央である白線が見えます。

白線を切開すると、腹腔になります。

 

ふくうさ6.jpg

 

膀胱が直下に見えたので

腹腔外に露出させました。

 

ふくうさ7.jpg

 

膀胱を切開すると、

結石の姿が現われました。

 

ふくうさ8.jpg

 

取り出した球形の結石です。

ウサギの尿路結石の殆どは炭酸カルシウム結石であることが

知られています。

 

ふくうさ9.jpg

 

膀胱の縫合は吸収性の5-0PDSⅡで行いました。

 

 

ふくうさ10.jpg

 

縫合が完了しました。

 

 

ふくうさ12.jpg

 

 

次に子宮、左右卵巣を 摘出手術を実施しました。

腹腔内の多量の脂肪が確認できます。

ペットのウサギは、運動量が少ない為、体重が普通でも

体脂肪率が高い場合が多いのです。

 

 

 

 

 

 

ふくうさ15.jpg

 

 

 

腹壁、皮膚を縫合し、

手術は無事に終わりました。

ウサコは手術後2時間後には乾草を食べ始め、

順調な経過をたどり、2週間後に抜糸を完了しました。

 

ウサギの尿路結石は食事の栄養素の不均衡や細菌感染、

カルシウム排泄等の生理学的要因が関与しています。

また、肥満傾向の場合に好発する傾向があります。

カルシウムの尿中への排出はイヌ・ネコで2%以下であるのに対して

ウサギでは45~60%にもなります。

この生理的特徴が結石を作り易くしています。

予防は、カルシウムの食事中の含有量を確認し、

ウサギ専用結石予防用のペレットや低カルシウムのイネ科

の乾草を給餌する必要があります。