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小鳥の診療室

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3章 飼い主も知ってほしい代表的な鳥の病気

メガバクテリア症(=AYG、マクロラブダス症)

多くの鳥類の胃に生息している大型、棒状の微生物で、メガバクテリアと呼ばれていますが、近年カビの仲間であることがわかり、Macrorhabdus Ornithogasterという学名が与えられました。このマクロラブダスが感染し、それによって起こるいろいろな疾病をメガバクテリア症(マクロラブダス症)といいます。しかし、感染したからといって全ての鳥が発症するわけではありません。

発症する要因には
  1. 好発する品種:(セキセイインコが最も多く、カナリア、キンカチョウ、 マメリリハ、オカメインコと続きます。)
  2. 年齢:(急性症状は幼若期、慢性症状は1歳以上に多いようです。)
  3. 免疫状態:(換羽期や環境の変化、他の疾病ストレスで、抵抗力が落ちると発症 し易くなります。)

といったものがあります。


つまり、個体の体力や免疫力に左右されるので、一生を通じて発症しないこともあれば、長期間続くタイプ、急激に重篤な症状を呈するタイプといろいろです。
主な感染経路は母親から子への垂直感染といわれ、親から子へ与えられる吐き戻しのエサから感染するようです。また、同居している鳥の糞を食べたり、オスの求愛時の吐物からうつることもあります。
マクロラブダスは胃に生息するので、感染が進行すると胃炎になり食欲減退、元気消失し、時に吐き気や嘔吐を起こします。
胃潰瘍や胃出血まで起こした場合は血液の混じった黒色便や貧血が見られ、出血が激しい場合は突然死を起こすことがあります。
また、感染により胃腸の消化能力の低下が起こる為、食べた種子が消化されずにそのまま排泄され(全粒便)、食べても食べても痩せていってしまいます。
マクロラブダス症は慢性化するとなかなか治らない病気ですが、発症する前に早期発見、早期治療すれば抗真菌剤を投与することで完治も可能な病気です。
飼い主さんが予防のためにできることも幾つかあります。

① 体重測定食欲や元気があっても感染する病気なので、数日事には測定して体重の減少を見逃さないようにします。
② 免疫低下の予防前述した環境の変化やストレスを回避するように注意が必要です。
③ 環境の消毒カビの仲間ですので使用していたケージや道具の消毒は、感染の拡大防止にとても有効です。また、新しい鳥を入れる際にはすぐに接触させずに、健康診断を済ませてからの方が安全です。

※マクロラブダス菌は糞便に出てくることが多いので、体重の減少や脱羽など異常に気付いたら検便も含めた健康診断を行いましょう。



ビタミンB1欠乏症(脚気、脚弱症、チアミン欠乏症、多発性神経炎)

たくさんの栄養素が必要な巣立ち後の幼若期に見られ、特にアワ玉のみの挿し餌で飼育されている幼鳥が最も発症しやすいです。

ビタミンB1は穀類に含まれ通常欠乏しませんが、アワ玉を作る過程で殆どが減少してしまうので、アワ玉のみでは欠乏するのです。

更に、巣立ちの時期には運動量も増えてB1消費量も増加してしまうのです。欠乏状態になると、神経の糖代謝の阻害が起き、多発性神経炎が起きます。最初は脚のしびれや筋肉の痛みから、跛行(びっこ)が始まり、片足から両足と進行します。
やがて、足先だけで体を支えられなくなると、かかとをついて歩くようになり、嘴や翼を使って移動するようになります。更に進行すると、呼吸困難や循環障害、脳神経障害によりケイレンを起こして死亡してしまいます。
予防は当然ながらビタミンB1豊富な食餌給与であり、幼若鳥用のペレット、もしくはパウダーフードが適切です。



ビタミンD欠乏症

幼鳥や産卵期の鳥に見られ、なかでも骨軟化症はオカメインコで多く発生します。
ビタミンD3は腸管、骨、腎臓に作用してカルシウムやリンの濃度調整の役割をしていて、紫外線により体内で作られます。ビタミンD3不足の食餌をしている鳥は日光浴不足が引き金になり欠乏症となります。冬場は特に発生率が高まります。
ビタミンD3欠乏は、腸管からのCa吸収ができなくなるため、幼鳥はくる病や成鳥不良、成鳥では骨軟化症、骨折、骨粗鬆症などが起こります。家では日光浴を一日最低15分させることが推奨されます。ガラス越しなら30分は行いましょう。



PBFD(オウム類の嘴-羽毛病)

PBFDは、PBFDウイルス(サーコウイルス)の感染によって引き起こされ、重篤かつ致命的な感染症疾病です。PBFDは主に3歳以下のあらゆるオウム・インコ類に感受性が高く、世界中で発生が見られています。感染様式としては病鳥の糞便及び羽毛ダストまたは汚染環境を介しての水平感染の他、垂直感染の可能性も示唆されています。

潜伏期間は早いもので2~4週、遅いもので数カ月~数年にわたると言われています。症状は、甚急性、急性、慢性の3型に分けられ、初生に見られる甚急性型は肺炎、腸炎、急激な体重減少、死亡など、1か月齢前後の幼鳥に見られる急性型は沈鬱、発育羽毛の異常、そ嚢食滞、下痢など、若鳥~成鳥に見られる慢性型では羽鞘の残存、出血、折れ、くびれ、ねじれ、発育停止ストレスライン、変色などの羽毛障害、進行性の脱羽、脂粉の減少、嘴または爪の過長や脆弱化などが見られます。また、この病気ではリンパ系器官が障害され、免疫不全になることが知られています。さらに、病気から回復した個体はキャリアとなる可能性もあります。



クラミジア症(CHL)-オーム病

クラミジア症はクラミジア・シッタシの感染によって引き起こされる人畜共通感染症です。
あらゆる年齢の鳥類全般に感受性があり、世界中で発生が見られています。感染様式としては、病鳥の糞便、分泌液及び羽毛ダストまたは汚染環境を介しての水平感染のほか、垂直感染も知られています。
潜伏期間は数日~数週以上で、不顕性感染または持続感染することも珍しくありません。
症状は、体羽の租造化、体温低下、震え、昏睡、結膜炎、呼吸困難、鼻炎、副鼻腔炎、衰弱、脱水、黄色~緑色便、水様便などであり、死亡することもあります。



マイコプラズマ病(MYC)

マイコプラズマ病はマイコプラズマ菌の感染によって引き起こされる呼吸器疾患です。
鳥類のマイコプラズマ病は、慢性呼吸器病及び関節炎を引き起こすニワトリの疾病としてよく知られていますが、セキセイインコ、オカメインコを始め、コンゴウインコ、ボウシインコ、大型オウム類及びフィンチ類など飼い鳥においても、世界各地で本病の発症が報告されています。感染様式としては、病鳥との直接接触、病原体を含む飛沫物やほこりを介しての水平感染の他、介卵による垂直感染も知られています。
症状は結膜炎、鼻炎、副鼻腔炎を起こし、時に気管支炎や気嚢炎にまで進行することもあります。
セキセイやオカメインコでは結膜炎や副鼻腔炎が慢性化することが知られています。



鳥の疥癬(カイセン)症

疥癬はダニ目、トリヒゼンダニ属の節足動物です。円形、短足のダニで、0.4×0.3㎜と小さく、肉眼では観察できません。トリヒゼンダニは皮膚に空けた穴で生活します。交尾は皮膚表面で行われ、メスは皮膚に潜りこん産卵します。孵化した幼ダニは皮膚表面で脱皮を繰り返し、成ダニとなります。ヒゼンダニの仲間は鳥の体を離れると長く生きていられず、鳥同士が接触することで伝搬すると考えられます。
セキセイインコによく見られ、口角や脚の鱗(うろこ)が最初に侵されやすく、次第に嘴、ろう膜顔、脚全体に広がり、独特な軽石様の皮膚病変が形成され、嘴や爪が徐々に変形し過長します。多くは痒みを伴い、重度の場合衰弱死することまあります。
病変部を掻爬あるいはテープスタンプし、顕微鏡検査で成虫、卵を見つけることで診断します。治療はマクロライド系駆虫薬の経口投与、あるいは経皮投与で、通常良好に治癒します。




嘴の異常

① 先天性奇形しばしば見られます。
② 過長(合成異常)肝不全、アミノ酸欠乏やPBFD、疥癬などによって、嘴の成長に必要なタンパクの合成異常が生じ、上嘴が過伸長します。トリミングするとともに原因治療が必要です。
③ 過長(咬合異常)顎関節障害(事故、ロックジョーなど)、嘴成長版障害(副鼻腔炎、PBFD疥癬、事故など)から咬合不全が起き、過伸長します。副鼻腔炎は主に細菌が原因ですが、真菌(カンジタ、クリプトコッカス、アスペルギルスなど)によっても生じます。
④ 過長(咬合不足)オウム類の嘴は咬み合わせ、すり合わせによって嘴を短くしています。(咬耗)。硬いものをかじって短くしているというのは迷信です。猛禽類では咬合不足から過長が生じます。
⑤ 脱落・折損事故(鳥同士の喧嘩)、中・大型鳥のPBFDなどが原因です。上嘴の欠損は自力採食が可能ですが、下嘴の欠損は生涯にわたる強制給餌が必要となることが多いです。
⑥ 短小化卵内あるいは巣内ヒナ期の栄養障害が原因です。通常、成熟とともに正常化します。




過発情とそれに関わる様々な病気

現在、鳥の診察において最も頻繁に見られる疾患が繁殖関連疾患であり、その原因の殆どに過発情が関わっています。ここでは過発情を起こす様々な要因と対策、そしてそれによって起こる様々な疾患をあげていきます。



過発情の要因

①光
発情は光周期(明るい時間)が長いほど強くなることが研究で証明されています。現在の人間の生活リズムは明るい時間帯が非常に長く、鳥にとっては発情を常に促している状態なのです。発情抑制効果が出る光周期は8時間以内と言われているので、できるだけこれに近づけるのが第一です。

対策
  • なるべく早く寝かせて、遅く起こす。(日没就寝)
  • 一度暗くしたら、また明るくしないよう注意する。
  • 布だけ掛けるのではなく「寝られる」場所に置いておく。
  • 発情してしまったメスでは、昼間にケージに布を掛けたりしてうす暗くならないようにします。
    (産卵を促してしまいます。)

②温度と湿度
野生で生きている鳥は、季節の変化を感じて繁殖を始めます。例えば、四季のある温帯気候に生息する種類は気温の高くなる春から夏にかけて繁殖し、気温の低くなる冬には繁殖しません。また、1年を通して温度差が少ない熱帯気候に生息する種類は、雨季が発情開始の要因となります。これに対し、室内で飼育されている鳥は、温度はエアコンによってコントロ-ルされ、雨風にもさらされない快適な環境下、即ち季節感がない中にいるため、発情開始だけでなく発情助長の要因にもなるのです。

対策
・冬は過保護にせず、少しくらいの寒さにも耐えられるだけの体力作りをしましょう。
・梅雨~夏にかけて湿度が上がる時期には、除湿器等で湿度をさげましょう。

③ 発情対象
一般的にオスはメスよりも前に発情し、メスを刺激して発情を促します。それで、オスは相手がいなくても一羽で発情を起こします。メスはオスの求愛行動だけでなく、仲間の存在や鳴き声など視覚的、聴覚的な刺激も発情を促されます。また、人に慣れている鳥は人をパートナーや仲間と認識しますので、人との接触は当然、発情開始と発情助長の要因になります。
以上のことから、発情の対象になるのは、
  • 同居の鳥(異なる種類でもあり得ます。)
  • 人間(触ったり、話しかけたりすることも刺激になります。)
  • おもちゃ
  • 鏡(自分の姿)
などがあり、これらを周りから外しておくことが対策になります。
ただし、ラブバード(コザクラインコ)など、ペアの結びつきの強い種類は遠ざけることで精神的に不安定になり毛引き症になることもあるので、注意が必要です。

④ 巣、巣材
オウム目(インコ、オウムなど)のメス、スズメ目(メジロ、文鳥、カナリアなど)のオスとメスにとっては、巣や巣材の存在は発情開始の為の重要な刺激になります。巣箱、つぼ巣だけでなく、巣と思うようなものはケージの中に入れないようにする必要があります。
外に出した時に、衣服やカーテン、引き出しの中に潜らせないようにします。巣の中に卵がある場合は、産卵を止めるために卵を取ってしまいます。それでも産卵するなら、抱卵させて抱卵期に移行させるのも方法です。


腹部黄色腫(キサントーマ)

おもに腹部に多く見られ、結節状~扁平状に腹壁の皮膚が膨らみ黄色くなったものです。黄色腫は脂質を貪食したマクロファージが集まったものであり、別の言い方をすれば、脂質を含んだ炎症性肉芽腫病変ということになります。過発情になると女性ホルモン(エストロジェン)過剰から高脂血症になり、加えて抱卵班(抱卵期になると腹部の皮膚が分厚くなる)や腹部ヘルニアで皮膚が進展してしまうことが関連するのではないかと考えられています。発情がおさまると黄色腫も消えてしまうことも多いです。


過剰産卵

セキセイインコの場合、通常1年に1~2回の産卵周期があり、1回の周期に4~7個産卵します。これを上回る産卵回数、産卵数になれば過剰産卵といえます。栄養的に充足し、卵管に異常がなければ問題は起こりませんが、栄養不足(特にCa)や卵管異常を同時に生じていると、卵の変質や変形、卵塞などあらゆる繁殖関連疾患の原因となります。


多骨性骨化過剰症(骨髄骨)

鳥類は産卵の数週間前より卵殻を作る為にカルシウムを骨に蓄積し始めます。この形成にはエストロジェンの影響が大きく関わっており、持続発情になるとエストロジェンは増加し続け、カルシウムが骨に沈着し続けます。
通常、レントゲン検査で骨が正常よりも透過性が低下する(=白くなる)ことで診断します。セキセイインコによく起こり、過発情の時だけでなく繁殖異常を持つメスや精巣腫瘍を持ったオスにも見られます。


精巣腫瘍

精巣に発生する腫瘍です。3歳以上のセキセイインコに特に多く見られます。精巣は熱に弱く、高温に長期間さらされると腫瘍化しやすくなると考えられています。発情期になると精巣は著しく腫大し各臓器と密着します。
鳥の体温は42℃前後ですので、精巣は高温の中でさらされることになり、更に持続発情している状態では精巣が長期間高温下で存在することとなるのです。精巣腫瘍の中にはエストロジェンを大量に分泌するタイプがあり、これがメス化を起こします。例えば、ろう膜の変色(青色→茶褐色)、交尾の受け入れ姿勢や巣作り行動などのメスの行動、骨髄骨の形成などが起こります。
精巣が体内の中で肥大すると他の臓器や神経を圧迫するため、脚の麻痺や胃腸の通過障害、呼吸症状なども見られます。



からだの変化

疾患まではいかないものの、発情が起きると体の各部分にいろいろな兆候が見られます。このような兆候がみられたら過発情にならないような環境作りをしましょう。
  • 体重の増加
  • 発情行動(巣ごもり行動)
  • 便の大きさ:肛門が弛緩して広がる為、一度にする量が増えます。
  • 多飲多尿
  • お腹の張り:卵管が腫大するため、お腹が膨れます。


卵塞(卵秘、卵詰まり、卵停滞、難産)

卵が膣部あるいは子宮部から一定時間経過しても出てこない状態をいいます。
一般的には排卵後24時間以内に産卵されます。従って腹部に卵が触知されてから24時間以内に産卵されない場合は卵塞ということになります。
初産や過剰産卵の時によく起こり易く、更にビタミン、ミネラル不足の食餌を与えていたり、日光浴が不足している時にも発生率が高くなります。
原因は様々ありますが

  1.  低カルシウム血症による神経的な子宮収縮不全
  2.  運動不足や栄養不足、疾病などによる産卵に必要な筋力の低下
  3.  変形卵や未成熟卵、巨大卵などの卵の形成異常による通過障害
  4.  環境(温度、騒音、移動など)ストレスによる産卵機構の急停止
  5.  先天性、ホルモン失調、外傷などによる卵管口の閉鎖

といったものが原因になります。典型的な症状は、床でうずくまる、沈鬱、膨羽、食欲不振、長時間のイキミ、呼吸促迫などですが、無症状の場合もあります。
しかし、卵塞の時間が長くなると痛みによりショック症状を起こすことも多く、突然死することもあります。卵塞になった場合は、何らかの処置が必要なことが多いので、卵を触知して24時間経っても出てこない場合は、必ず病院に相談しましょう。卵塞にならない為には、発情の抑制、日頃の適切な飼育管理(カルシウム、ビタミンD、日光浴)が欠かせません。最も重要なことは、卵が出来ているのを見逃さないことで、その為には発情が起こったら体重の測定とお腹の確認を毎日行うことです。




腺胃拡張 【症候群】(腺胃=前胃 前胃と砂嚢の項参照)

腺胃が様々な疾患から拡張している状態を言います。
種類によっては発生の原因が異なり、コンゴウインコやヨウム、バタンなどでは、胃を支配する神経へのウイルス感染によって起こる疾患(腺胃拡張症;PDD)と言われていましたが、セキセイインコの場合は、慢性胃炎や胃癌、マクロラブダス症、胃閉塞など様々な疾患から二次的に起こる可能性があります。
急性に発症した時には、食欲不振、食滞、嘔吐、緑便などの一般症状が見られます。慢性化した場合は症状が見られないこともありますが、胃の機能が著しく低下しタンパク質の消化ができなくなるため、たくさん食べても痩せてしまう消耗性疾患となります。腺胃拡張はX線検査で診断されることが多いですが、原因の確認のため糞便検査やウイルス感染の遺伝子検査なども有効なので、体重の減少や病的症状が見られる場合は病院での診察をうけましょう。



金属中毒

鳥は砂嚢に小石など固いものを溜め込んで食べ物の消化の助けとしています。そのため、小石や砂、金属片などを摂食する習性があり、柔らかい金属なら嘴で切断することもできます。したがって金属中毒も発生しやすいのです。鉛中毒は、金属中毒の中でも一般の飼い鳥において発生する危険性が非常に高い疾患と言えます。なぜなら、私達の日常生活の中で鉛が様々な形で多く使われているからです。
例えば

  • カーテンや釣りの重り
  • ハンダ
  • バッテリー
  • ニスやラッカーなどの塗料
  • ワインの蓋
  • 古いペンキ
  • パワーアンクルの中身
  • 鉛の入ったガソリンの煙
  • 漆喰

など、その他にもいろいろなものに鉛が含まれています。
オカメインコは感受性が高いこともあり特に頻発し、ボタンインコ、セキセイインコ、コザクラインコが続きます。このようなオウム目の鳥は好奇心が旺盛で何でもかじる傾向にあり、監視されずに放鳥されていれば発生率が高くなるのは自然なことです。
また、一度中毒になった鳥は再発することが多いので注意が必要です。鉛の毒性は全ての組織に影響を与えます。特に血液、造血器系、神経系、消化器系、腎臓への影響が強く、鳥では肝臓にも強い影響を及ぼすことがわかっています。

  • 突然、元気がなくなる
  • 溶血により便が濃緑色化と尿酸の黄~緑色化、更に進むと尿や尿酸がピンク色になる。
  • 各消化器の弛緩性麻痺による食滞や便秘、それに付随しての食欲低下、嘔吐
  • 脚の麻痺による跛行、握力低下、犬座姿勢、止まり木からの落下
  • 興奮、パニック、沈鬱などの情緒不安定から、重篤な場合は痙攣が起こる。
    後遺症が残ることもある。
  • 腎不全により多尿や足の麻痺が見られる。

などです。これらは摂食直後に症状が見られることが少なくありません。
また、一度中毒が発症すると進行は急速で、発症してから48時間以内に死に至ることがあります。その為、上記のような症状が見られたら、直ぐに病院での治療が必要です。早期(症状が出てから48時間以内)に適切な治療を行えば、かなりの確率で救命が可能です。




その他の中毒

中毒は金属だけでなく、私達の身の回りにある様々なものでも起こり得ます。

植物アボガドは、摂取後24時間以内に発症、死亡します。サトイモ科観葉植物(ポトス、クワズイモ、ディフェンバキアなど)は、シュウ酸カルシウム血症により口腔内痛が生じます。
カビトウモロコシ、落花生、ピスタチオ、アーモンドなどから検出されるアフラトキシンが原因。大量摂取で肝不全、腎不全、胃腸管出血が見られます。
チョコレートテオブロミンとカフェインによる循環器及び中枢神経に障害が出ます。
アルコール飲料中枢神経の抑制が生じ、呼吸停止、心停止を起こすことがあります。
シードジャーキーひまわり、アサノミなどの脂肪の多い種子を過食することで、脂肪肝、肥満、下痢を起こします。
水中毒幼鳥への挿し餌の際に水分の多いまま与え続けると発症します。血液の電解質異常が深刻になると、脳障害、消化器障害、腎不全などを起こして、死亡することがあります。
吸引性毒素ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ガス
PTFEはテフロンなど様々な調理器具やアイロン、ヒーターなどに使用されています。280℃以上に加熱されるとPTFEは分解され毒性ガスを排出します。毒性ガスを吸入すると数分で発症し、数十分で呼吸不全や突然死を起こす危険なガスです。
タバコタバコの煙にはニコチン、タール、一酸化炭素などの有害物質が含まれます。タールによる呼吸器症状やニコチン中毒による嘔吐、下痢、けいれん発作、急死などがあります。
アスファルト道路工事でアスファルト類が加熱されることで硫化水素、一酸化炭素、様々な脂肪族炭化水素が粒子となって排出されます。これを吸入することで中毒になります。粘膜刺激によるくしゃみや咳、結膜炎、呼吸困難などから突然死が起こります。

※このような中毒の危険から守る為に最も大事なことは、放鳥の時に目を離さないことと、放鳥を行う場所から中毒の原因となるものを遠ざけることです。



毛引き症と自咬症

毛引き症は自分で羽毛を引き抜く症状をいいます。
嘴の届かない顔周囲以外の体のあらゆる部位の羽毛を抜いてしまい、地肌が丸見えの状態までなることがあります。更に悪化すると、羽毛だけでなく、地肌まで傷つけてしまう「自咬症」にまで発展してしまいます。
多くのインコで見られますが、特にコザクラインコ、ボタンインコ、オカメインコ、ヨウム、バタンなどに多いようです。これらの種類に特徴的なのは、知能が高くて愛情細やか、人になつく内向的なタイプであることです。



① 生理的な毛引き

  • 抱卵時の毛引き
  • 汚れたり折れた羽などの異常な羽を除去する
  • 軟膏などを塗る、タバコや料理の煙、ハンドクリームなどが体に付着して、それを除去するための毛引き


② 精神的な毛引き

  • 愛情問題(飼い主さんの気を引きたい、同居鳥との関係悪化)
  • 遊ぶ時間が少ない
  • 日によって接し方がまちまち
  • 寝る時間が不規則
  • 他の鳥がやってきた
  • 家族構成が変わった(出産、飼い主が亡くなるなど)
  • 退屈
    賢い鳥は好奇心旺盛なので、することが無くなると退屈から毛引きを始めます
  • 環境の変化
    ケージの場所を変えたり、近所が工事中で騒音が続いたり、日光浴不足など物理的な環境の問題がストレスに。


③ 炎症性の毛引き

  • アレルギー
    食餌やダニ、ほこりなどがアレルギーの原因となるのでは?と言われています。
  • 神経炎
    腺胃拡張症の原因といわれているボルナウイルスによる皮膚神経の炎症と毛引きの間に関係があるのでは?と言われています。
  • 寄生虫
    海外ではジアルジアの感染と毛引きの関係が疑われていますが、国内では殆どありません。


④ その他

  • 高カロリー摂取
    側腹部や腹部に皮下脂肪がつくとその部位の羽毛を抜くことがあります。
  • ビタミンA不足
    皮膚の乾燥が起こり易くなるためです。
  • カルシウム不足
    人間でもカルシウムが低下するとイライラすると言われますが、鳥でも毛引き行動の原因と考えられます。


毛引き症の予防と対策

  1. 刺激物の除去
    タバコや煙、芳香剤などは鳥の部屋で使用しないこと。
  2. 小屋の掃除
    ほこりやダニ、糞尿などを毎日取り除く。
  3. 日光浴
    ホルモンバランスを調整し、気分転換にもなります。
  4. 適切な食餌
    肥満は厳禁。羽毛の発羽、維持に必要なビタミンA、カルシウムなどが不足しがちなので、野菜やボレー粉をあげてバランスの良い栄養補給をします。
  5. 退屈させないこと
    おもちゃなどで遊ばせておくことで、(良い意味での)ストレスを与え関心を体からそらしてしまいます。
  6. しつけ
    我慢することを覚えると、飼い主と離れたり外的なストレスにも強くなります。特に幼鳥時の精神成長は重要なので、親鳥に育ててもらうのも方法の1つです。



痛風

痛風は、尿酸が体液中に飽和状態になり(高尿酸血症)、産生された尿酸結晶の刺激によって起きる病気です。人間にも痛風があることは有名ですが、人間の場合には尿酸はプリン体の最終代謝産物として産生されるもので、プリン体の代謝異常で痛風が起こります。鳥の場合、尿酸はタンパク質の最終代謝産物でもあるので(鳥の窒素性老廃物の60~80%は尿酸として排泄される。)タンパク質の過剰摂取や腎不全で痛風が起こります。(他の高尿酸血症の原因として脱水、細菌・ウイルス感染症による毒血症、消化管出血、腎尿細管上皮障害をもたらす慢性ビタミンA欠乏もあります。)特に慢性腎不全をもつ高齢のセキイセイインコで痛風が頻繁に見られ、オカメインコやコザクラインコでも少数見られます。尿酸結晶のできる場所によって間接型と内蔵型に分かれます。



① 関節痛風

尿酸が足の関節や軟骨、靭帯などに沈着することで起こります。初めは足の挙上や跛行、握力の低下により止まり木から落下、あるいは止まり木をつかみたがらないなどの症状くらいですが、進行すると白~クリーム色の尿酸の固まり(痛風結節)が見られ、痛みも強く跛行や挙上もはっきり目立つようになります。痛風結節は足の指の関節にできることが多いですが、徐々にかかとまで広がり、末期には膝や翼、脊椎の関節にも現れることもあります。


② 内蔵痛風

主に肝臓や心臓に結晶ができますが、体腔内の色々なところに見られます。脱水や多尿、元気消失や食欲低下など腎不全の症状が見られた後、突然死するのが典型的なパターンです。


予防と治療

痛風は腎不全によって起こる病気なので、予防策は腎臓を保護することです。
  • 新鮮な水を十分与えること
  • タンパク質の多いエサ(ヒマワリ、麻の実など)を避けて、ビタミンを多く含む野菜(小松菜、チンゲン菜など)を与えること
  • 適度な保温
    尿酸は低温になると、結晶ができやすくなります。

痛風は、治療の難しい病気です。
  • 痛みを和らげ症状の進行を止めるような治療をしていきます。痛風治療薬の経口投与とビタミン、ミネラルの投与を行います。
  • 脚に障害があるので、止まり木を外し(または低い位置に設置する)落下してしまうなど危険がないように環境の改善をします。


骨折

主に外部からの強い圧力(ガラスに激突、踏んでしまう)によりますが、くる病や過産卵、骨腫瘍などで骨が弱っていると、小さい圧力(運動、保定)でも折れてしまいます。四肢の場合、骨折端より先がぶらぶらします。骨折部位の腫脹や内出血による黒色化、開放骨折(骨折端が体外に飛び出た骨折)では出血もみられます。触診やレントゲン検査で診断します。


治療

若木骨折(断裂せずに折れ曲がった骨折)はギブス固定で充分ですが、断端のずれた骨折では手術が推奨されます。小型鳥ではピンを骨髄にいれて補強するピンニングが主で、大型鳥では骨にピンを垂直に刺す創外固定が必要となることが多いです。




頭部・皮膚の腫瘤

非腫瘍性
膿が溜まってしまう膿瘍、炎症病変の1つである肉芽腫、皮膚組織に脂質が漏れ出して炎症が起こる黄色腫、羽が出口を失って皮内に腫瘤状に形成される羽包嚢腫などがあります。


腫瘍性
尾脂腺に発生の多い腺腫や腺ガン、ウイルス性が疑われる乳頭腫、潰瘍のように見えることもある扁平上皮ガン、羽包から発生することが多い基底細胞腫、血管の腫瘍である血管腫や血管肉腫、線維組織の腫瘍である線維腫や線維肉腫などがよく見られます。

リンパ組織の腫瘍であるリンパ肉腫、メラニン色素の腫瘍の黒色腫、まれに肥満細胞腫、顆粒細胞腫なども見られます。皮下の腫瘍である脂肪腫や脂肪肉腫、胸腺腫もあります。
また、骨や筋肉などの皮下の腫瘍が皮膚腫瘤に見えることもあります。



診断と治療

脂肪腫や膿瘍、羽包嚢腫、黄色腫など、特徴的な外見から診断されることもあります。多くの場合摘出し、病理組織検査が必要となります。侵襲を伴う検査ですが、悪性腫瘍である可能性を考えると、早期の実施が推奨されます。

非腫瘍性
脂肪腫は食餌制限によって消失します。黄色腫は高脂血症の治療を主に行います。自咬がひどい時には摘出が必要となります。

腫瘍性
早期の摘出が非常に重要です。摘出後は、再発予防のため抗腫瘍効果が期待される薬剤の投与を考慮します。