症例・・・雑種 メス 10歳7か月 BW12.5kg プリン

主訴・・・数か月前に左上まぶたにものもらい?ができた。

     その後、徐々に大きくなってきたので心配になり来院。

     食欲、元気、一般状態は良好。

現症・・・左眼瞼の中央に5mm径の球形腫瘤が認められる。

     肉眼的所見よりマイボーム腺に由来した腫瘍を疑い、飼い主のSさんと相談し、

     外科的切除を実施しました。

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プロポフォールで導入し、イソフルレン吸入麻酔で維持しました。

腫瘤周囲の皮膚の毛刈り、滅菌消毒処置の手術準備をします。

 

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デマル氏挟瞼器で腫瘤周囲を挟みます。

この器具を装着することで、正確な切開、出血を最小限にできます。

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腫瘤周囲の皮膚を眼科用外科剪刃で切開し腫瘤を切除します。

出血は殆どありません。

 

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腫瘤切除により眼瞼に約7㎜幅の欠損ができたので、これを吸収性縫合糸で写真のように

縫合します。

 

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縫合が終了しました。

 

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狭瞼器を取り除きました。

眼瞼もずれないで合わせることができました。

 

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手術が無事終了しました。

 

病理組織学的診断:  マイボーム腺腫および霰粒腫

  眼瞼付属由来の良性の腫瘍性病変と、マイボーム腺腫に起因する瞼板内の炎症性病変が認め られました。

 腫瘍境界は明瞭で取り切れており、悪性所見はありません。

 

コメント: 眼瞼のマイボーム腺由来の腫瘤にはいくつかの呼び方があります。

(マイボーム腺; 瞼板及び内側結膜内層の中に存在する脂質分泌腺。眼表面の保護脂質成分を分泌する。)

  これを整理すると

  麦粒腫(ものもらい)・・・個々のマイボーム腺の膿瘍(膿が溜まったもの)

  霰粒腫・・・マイボーム腺分泌物の停滞が原因で起こる。

         腺房の破裂と固くなった分泌物の芯を中心に肉芽性反応をおこす。

  マイボーム腺腫(脂腺腺腫)・・・犬で最もよく見られる眼瞼の腫瘍。

           マイボーム腺から生じた良性の腫瘍。

 

プリンはこのマイボーム腺腫と霰粒腫が併発した腫瘤でした。

昨日の検診では気にすることもなく、術後は極めて良好でした。