2月に入ってから、立て続けに誤食したワンちゃんが来院しました。

治療経過がそれぞれ違ったので、

ご紹介したいと思います。

症例1:

 ヨークシャーテリア オス 3歳1ヶ月齢  BW 2.5kg

   ・・・こんにゃくのクシを飲んだかもしれない。

症例2:

ポメラニアン  去勢オス  3歳8ヶ月齢  BW 2・5kg

   ・・・スペアリブを食べてしまってから、元気がない。

症例3:

G・レトリバー 去勢オス  4歳9ヶ月齢  BW 38kg

   ・・・画びょうを飲んでしまった。

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ヨーキーのモカちゃん、

昨日から嘔吐があり、少し震えている

とのことで、来院しました。

気になることは、テーブルにのっていた

こんにゃくのクシが無くなっていることです。

飼主さんがおっしゃるには

「長さは5~6cm位、先は両端とも丸いです。」

とのことでした。

早速、レントゲンを撮りました。

 

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レントゲン所見からは、

クシの確認はできませんでした。

焼き鳥の竹串は先が尖っていて

胃や腸を穿孔する危険性大です。

再度確認したところ

「プラスチック製で両端は丸く、長さ5cm位の棒状」

ということでした。

そこで、緊急性はないと判断し、

輸液、制吐剤を投与し、経過を家で観察するよう

伝えました。

 

2日後、

「先生、横腹から何か飛び出ている!」

 

診察すると、確かに突起物を感じます。

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右側第9~10肋間の腹側付近に

先が屋や丸い突起物が出ていて、

腹部の方に向かっています。

 

「場所からみて、十二指腸を穿孔して腹壁も破って

皮下に飛び出しているようです。」

ちょっと、驚きでした。

丸いつるっとした棒でも腸壁や腹壁を突き破るとは・・・

 

 

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CRレントゲンの反転画像です。

プラスチックの棒は筒状で

気体陰影を示しました。

これでは、単純レントゲン写真では

判りません。

 

クシは、幽門から十二指腸に流れたところで

挟まり、腸の動きにより遠位側の腸壁を穿孔したのです。

 

直ぐにモカちゃんに全身麻酔を施し

皮膚切開してクシを引き抜くことにしました。

 

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麻酔をして、

横臥位で見ると

飛び出しがはっきり判ります。

 

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皮膚と皮下織に小切開をして

鉗子で静かに引き抜きました。

 

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引き抜いたプラスチックの串は

9cmありました。

2・5kgのヨークシャーの消化管では

順調に流れることはほぼ困難でしょう。

 

飲み込んでから、数日という短期間でで腹壁に飛び出してくれたのは

ある意味、ラッキーでした。

これが、もう少し遠位の腸に流れたら、

穿孔しても発見が遅くなり、

重度の腹膜炎を起こしたかもしれません。

 

モカちゃんは、その後の腹膜炎の予防の為

その日と翌日、抗生剤の静脈点滴をしました。

串を取り除いた後は、すっかり元気になりました。

 

 

症例2:

ポメラニアンのオレオちゃん。

昨夜、スペアリブの骨を盗み食いしちゃった。

今日はいつもより元気がないので、

診てほしいとの来院です。

 

直ぐに、レントゲン撮影です。

 

 

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骨は、胃の中と

厄介なことに食道遠位に引っかかっています。

 

食道内異物はそのままにすると

食道炎をおこし、食道壁を穿孔すれば

急性胸膜炎から膿胸そして敗血症を

起こし、呼吸不全により死に至ります。

 

一刻も早く、食道から取り除く必要があります。

方法は、2つ

引っ張りだすか、胃の中に落とし込んでしまうかです。

 

どちらにしても内視鏡の出番です。

 

診断直後にオレオちゃんには、

IV点滴を開始し、プロポフォールで麻酔導入をしました。

 

 

 

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2・5kgのポメラニアンなので

6mmの細径の内視鏡を使用しました。

 

 

 

 

   

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異物の骨は

噴門の手前にモニター画像のように

引っかかっていました。

異物把持鉗子を鉗子チャンネルから入れて

容易に取れそうに思いました。

鉗子を挿入し、

掴んだところで引っ張るのですが

異物は動きません。

食道内に挟まっているのです。

どうも先端が尖っていて

そこが食道粘膜に刺さっているようです。

そこで、掴んでから押し込もうとしました。

これでも動かないのです。

無理に動かそうとすると、鉗子が外れてしまいます。

数十分試みましたが、

うまくいきません。

そこで、もう少し強い把持鉗子を使うことにしました。

 

フィラリア摘出鉗子です。

内視鏡で確認しながら、内視鏡の外から

摘出鉗子を入れて、骨を掴みました。

その上で、引っ張りましたがやはり動きません。

無理に引っ張ると食道を痛めそうです。

そこで、骨を壊せないか、鉗子の把持力を強めました。

すると、とげの部分が割れました。

 

 

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再度、把持鉗子に変えて

とげの部分を取り出しました。

割れたことで、取り出しやすくなったのです。

 

そして、残った骨の部分を引っ張りましたが

やはり、抵抗があります。

そこで、胃の中に再度落とせるか試みると

うまく、胃内に落とすことができました。 ごしょく16.jpg                                                                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

挟まっていた食道部分です。

炎症と少量の出血で赤く充血しています。

 

苦労しましたが、

何とか食道から除去できました。

 

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翌日のオレオちゃん。

何事もなかったような澄まし顔です。

人の苦労も知らないで・・・・。

 

 

症例3:

 

ゴールデン・レトリバーのレオくん。

1時間ほど前に、画びょうを飲んでしまった

と来院しました。

 

時々あるのです。

なぜ、画びょうなんか飲むんでしょうね。

(理解に苦しむ・・・)

 

レントゲン撮影です。

 

 

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胃の中に食塊と一緒に

確かに飲んでいました。

 

同様の画びょうです。

 

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2.4cm位のプラスチックのつまみのある

画びょうです。

 

 

 

レオくんの体重は38kgです。

この程度の大きさの画びょうなら

便に包まれて問題なく排泄されるでしょう。

 

 

ただ、心配な飼主さんは、毎日便の中味を確認

することになりそうです。 

 

その後、飼主さんは便を毎日、崩して確認し続けたとのことです。

1週間後、無事に便の中のびょうを確認したとの、

ほっとした電話をいただきました。

 

 

以上、3症例を短期間内で経験したので

報告しました。