6月2日の夕方、仕事で多忙にしている中で幾つもかかってくる電話の中の一本。

「野良猫が誰かに後ろ足を切られたようです。出血しているので診てくれますか?」

時々、喧嘩傷や交通事故による傷を

「人に傷つけられた!」と勘違いするケースがあります。

今回もそうかな?と思いつつ、

「すぐ、連れてきてください。捕まえられますか?」

「はい、野良猫ですが家で餌をあげているので、慣れています。」

「わかりました、では、お待ちしています。」

 

15分程して、電話の主Nさんがキャリーに入った傷ついた猫を連れてきました。

 

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 猫には名前はなく、外で暮らしているメス猫、4週間前に子供を産み、子育て中とのことでした。

外観、歯の状態からまだ若く、1~2歳前後でしょう。

人懐っこく、怒ることもなく普通に触らせます。

 

外傷は左側臀部。 

8cm程の長さの切傷です。

皮膚だけでなく、皮下織の脂肪層もざっくり切られています。

あきらかに鋭利な刃物で一気に切られた傷と考えられました。

 

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世話をしているNさんに事情を尋ねました。

「昨夜、猫がギャー!!と叫ぶ声が聞こえました。

 その後、男性のボソボソと話す声も聞きました。

今朝、この猫を見つけた時、血が出ていてお尻がパックリ開いている傷に気づいたのです。

すぐにでも、病院へと思ったのですが、その時は姿を隠してしまいました。

夕方、やっと捕まえて連れてきたのです。」

以上が経緯でした。

 

推理からすれば、何者かによって、慣つこく寄ってきたこの猫が刃物で一気に傷つけられたと判断すべきでしょう。

動物虐待マニアか?

それとも猫被害に対する報復か?

いずれにしてもあまりにもむごい理解しがたい暴挙です。

 

何だあれ、この傷は治療しなくてはなりません。

麻酔下での消毒、縫合処置をNさんにお伝えし、入院となりました。

血液検査では出血による貧血は心配する程ではなく、

直ぐに縫合手術を実施しました。

 

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病変部を丁寧に洗浄し、毛を刈り、剃毛したところです。

まるで、メスで切開し開創したような傷です。

 

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臀部の脂肪パット層も写真のように切られています。

幸いに臀筋、この深部にある神経、太い血管等は無傷でした。

 

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受傷部を消毒し、有窓布をかけました。

 

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脂肪層をまず縫合しました。

 

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皮膚は医療用ワイヤーで縫合し、傷の処置は終了しました。

 

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翌日の猫の様子です。

まだ、不安そうな警戒心を持った顔をしていますが、食欲は旺盛です。

本来人懐っこい性格なので、術後の治療も温和しくさせてくれました。

 

 

さて、この卑劣な動物虐待行為に対してどうすべきかです。

Nさんと相談し、警察へ報告してもらうようお願いしました。

あきらかに動物愛護法に違反する行為です。

第5章罰則 

 27条

  愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

ということなのです。

 

法律はともかく、このような残虐な行為自体がどうにも理解しがたいことです。

そして、このようなことができる人間がこの静岡市に普通に生活していることも

怒りを禁じ得ません。

この日はスタッフ共々、言葉をなくすような一日となりました。